朝のカフェとニュースアラート
朝7時。ブルックリンの角にあるお気に入りのカフェで、いつものブラックコーヒーを片手にiPadを広げる。まずはニュースをチェックするのが日課だ。ここ数年、選挙のニュースを開かない日はないけれど、今朝も例外ではない。「トランプがまた爆弾発言」だとか「ハリス、討論会で毅然とした態度」だとか。見出しが画面を埋め尽くす。
周囲の喧騒に耳を傾けると、あちこちから聞こえる会話はやはり政治の話題。ブルックリンの住人たちは基本的にリベラルだが、共和党寄りの意見が聞こえることもある。「あの民主党は税金を上げるつもりだ」とか「バイデン政権は失敗だった」という具合に。私はそんな声を背に、黙々とコーヒーを飲む。言い争うつもりはないが、内心では少し皮肉な笑みが浮かんでいるのも事実だ。
家族の夕食と微妙な政治談義
夕方6時。仕事を終えた妻が、リビングで子どもたちと遊んでいる。長男は11歳、次男は9歳で、どちらも学校で「大統領選挙って何?」と質問攻めに遭っているらしい。彼らが夕食の席で、その日学校で聞いたことを私たちにぶつけてくるのは、もはや日常の一部だ。
「パパ、どうしてトランプはそんなに有名なの?」と長男。
「うーん、簡単に言うと、彼は注目を集めるのが得意なんだ。だから有名だよ。でも、それが良いことかはまた別の話だね。」そう答えつつ、トランプのスタイルをどう理解させるべきか迷う。
「ハリスさんは?」と今度は次男が尋ねる。
「彼女は副大統領でね、アメリカをもっと平等にしたいと思ってるんだ。」ただし、平等が何を意味するのか、9歳の頭にはまだ理解しがたいかもしれない。子どもたちに政治の複雑さを教えるのは、ちょっとしたチャレンジだ。
トランプのマラソン、ハリスのシンフォニー
トランプ氏を見ていると、まるで長距離ランナーのようだと思う。何度転んでも立ち上がり、息切れすることなく走り続ける。ただし、そのコースが一部の人には不明瞭で、彼が走る方向に多くの人が疑問を抱いていることは間違いない。彼の支持者たちには、彼がゴールにたどり着くまで、いかなる障害も彼を止められないと信じている人が多い。
一方で、ハリス氏の戦い方はどちらかといえばシンフォニーの指揮者に似ている。彼女は冷静で、一つ一つの音を正確に、調和を持って奏でようとしている。ただ、シンフォニーには聴衆が必要であり、今のアメリカはそのハーモニーを理解する余裕があるのか、正直わからない。
休日のレコードショップで思うこと
土曜日の午後。地下にあるビンテージレコードショップを歩き回りながら、音楽を聴いていると、ふと選挙のことを忘れられる瞬間がある。あの棚に並ぶ60年代のアルバムたちを手に取っていると、もっとシンプルな時代を感じる。でも、その「シンプルさ」も、ただの幻想かもしれない。アメリカは常に変化し、混乱の中で進化してきた国だ。
「レコードを探すのと、良い政治家を選ぶのって似てるのかもな」と思うことがある。どちらも簡単じゃない。いくつかの名盤は一目で分かるが、時に棚の奥に埋もれている珠玉の一枚を見つけるには根気がいる。そして、それを引っ張り出すためには、確かな判断力が必要だ。まるで今の選挙のように。
結局、アメリカはどう動くのか?
選挙戦が本格化する中、私は静かに観察を続ける。ニューヨークのカフェでのんびり過ごす時間も、家族との対話も、レコード探しも、すべてがこの国の一部だ。そして、どちらの候補が勝とうと、アメリカはそのまま動き続ける。
私は投票日が来るのを楽しみにしている。なぜなら、その結果がどうであれ、この国は前に進む。それがアメリカの強みであり、私たちの民主主義の本質だからだ。